【水平線】パースの知識をどう使えば良いかわからない人向けのコツの話【その1】

はじめに

今回はパースのお話です。
パースは理屈の世界ですが、実務では感覚に依る部分も多分に含んでいるため、理解して実際に扱えるようになるまでの敷居は割と高いです。
私自身描きはじめの頃はかなり苦労したので、これからパースを理解したい人の役に立てればと思いこの記事を執筆しました。
すでに「水平線」「一点透視」「二点透視・三点透視」について基本的な知識がある人に向けて実務を絡めた話をしていきます。

そもそもパース知識は必要なの?

詳しい説明をする前に「パースを理解する意味」について触れてみたいと思います。
パースとは、風景を狙った角度で描画するために使う補助具のようなものです。

ですがその補助具も万能ではありません。
パース技法に則った「正確な絵」が必ずしも良い絵とは限りませんし、
なんならパースの知識なんてなくとも、何百何千と習作を繰り返していれば自然と「狂って見えない良い風景」は描けるようになります。

じゃあパースを理解する意味なんてないのでは?と思うかもしれません。
確かに、趣味の分野で一人で描くならそのとおりだと思います。

ただ、仕事の世界となるとちょっと話は変わってきます。
お金をもらうならおかしな絵は出せないのはもちろん、パースの知識があればそのアングルにどういう意味があって、何を意図したのかを言葉で説明することができます。
あるいは、下請け(漫画アシスタントなど)にお願いするときにも、パース知識の有無で指示の精度にはかなり差が出ます。
指示が良ければより短時間で絵を仕上げてもらえますから、結果的に依頼者側も支払う報酬を節約できます。
知識とは理論であって、相手に伝える手段にもなるわけです。

「他人が欲しい絵を描く」あるいは「他人に代わりに描いてもらう」といった場面ではパースの知識はある程度必要だと考えています。

パースの土台・水平線の扱い方 

ではさっそくパースの基礎にして作画の土台、水平線について書いていきます。
読んで字のごとく、通常のシーン内では水平な線で描画されるこの線について留意すべき点は以下の2つです。

1つ目は位置(高さ)
2つ目は角度

それぞれ以下で説明していきます。

水平線の高さをどこに設定するか

アオリと俯瞰について

水平線は常に「カメラの高さ」に設定され、
この線(目の高さ)より上にあるものはアオリ(見上げる視点)、下にあるものは俯瞰(見下ろす視点)になります。

カメラの位置を画面の下のほうに設定すればシーン内のものはアオリ気味になります。
下から見上げる画面では空が見える割合が増えるので、天にそびえ立つ物体の大きさをより印象づけたり、空模様の描画をしやすくなります。

一方、目線の高さを画面の上に設定すればシーン内のものは俯瞰気味になります。
上から見下ろすアングルでは地面の見える割合が多くなるため、眼下に広がる森や海などをより広大に見せたい場面で採用されます。

アオリと俯瞰はそれぞれ特徴的な印象を与えやすいので、使用する場合は狙ったイメージと一致するかをよく考える必要があります。

「通常」の目線の高さで設定するには

では、俯瞰やアオリのような印象づけやすい視点ではなく「通常の目線(のように感じる)高さ」で設定したい場合は、画面のどこに水平線を置くべきでしょうか。

シーンによって柔軟に判断されるべきではありますが、迷ったときに選べるのは以下の2つの方法です。

1つ目は画面内の4:6の位置を基準にすること
2つ目はシーン内で主要なキャラクターの目線の高さに合わせること です。

ただしこれらはキャラクターありきの背景いい感じっぽく見せる方法です。
キャラクターがいない「背景のみの画面・コマ」では退屈な構図になりがちなので、上記の「アオリ・俯瞰」気味にするか、「水平線を斜めにする」方法を使うと見栄えが良くなりやすいです。

画面内の4:6の位置を基準にする

4:6でイメージしやすいのは、例えばアドベンチャーゲームでキャラクターの立ち絵の後ろに背景イラストが表示されているような場面です。
このような画面では表示されているキャラクターか、そのシーンを見ている人物(主人公/プレイヤー)の目線の高さに水平線を設定して背景が作られます。

ただ、毎回キャラクターの身長を踏まえながら厳密に進めなければいけないかというとそうでもありません。
実際にはおおよそ上4:下6の割合になる高さ付近に水平線が置かれることが多いです。
5:5より気持ち上くらいの認識でもOK。
キャラ抜きで見てもバランスが良くなりやすいのもこの基準の良いところです。

とはいえ、背景をプレイヤーの操作で少し移動できるような場合や、UIで隠れる部分によっては4:6だと収まりが悪くなることもあります。
実際のUIや立ち絵を重ねたりしながらバランスを取っていく必要はありますが、最初から要件が定まっていない案件ではとりあえず4:6に設定して擦り合わせながら進めていくこともあります。

ちなみに漫画の場合はイラストと違ってこういった基準のようなものはあまりなく、割と自由な位置に水平線が置かれている場合が多いです。
漫画背景の角度はコマやセリフの流れにも依るので、水平線の位置は感覚で探っていく場面がイラストよりも多いように感じます。

シーン内で主要なキャラクターの目線の高さに合わせる

2つ目は主要なキャラクターの目の位置に水平線を合わせるというシンプルな基準です。
そのキャラクターに視線を誘導しやすくなることと、見る側にキャラクターと同じ目線で世界を見せる事ができます。
例えば子どもの目線で都市を巨大に見せるとか、空を飛ぶ龍の目線で雲海を見せるなどです。
水平線の位置が画面中央付近でも「キャラクターの目線で見ている」という情報があることで空間の大きさを伝えやすかったり、アオリや俯瞰っぽく見せることもできます。

この基準はイラストに限らず漫画でも何かと使いやすいです。
例えば消失点に向かう線があちこちに散らかっているようなラフでは「どこに水平線を置くべきか」で悩んでしまうことがあります。
部屋に平行に置かれているはずの「机」と「ベッド」の消失点が別々になってしまっているような場合です。
自分の絵なら自由に調整できますが、作家さんから預かっているラフだと勝手にアングルは変えられません。
しかもここを適当に設定したり間違ったままで作画に入ってしまうと、あとでどう消失点をいじろうが上手くいかず1からやり直す羽目になるので、最初の水平線の設定は意外と重要です。

水平線の高さがいまいち決まらない場面では、とりあえず水平線は主要なキャラクターの目線に合わせて、バラバラな消失点はお互いの間でバランスを取るような形にすればラフから多少角度が変わってもキャラクターとの齟齬は起きにくくなります。

水平線を斜めにするケース

水平線は基本的には常に画面に対して水平にあるものですが、見ている人間やカメラが傾いている場合は水平線も連動して角度がつきます。

水平線を斜めにするかどうかの判断基準は実にシンプルで、その画面内にいるキャラクターが斜めに立って見えるならば、水平線はそのキャラクターの重心線に対して90°の角度で交差します。
(重心線は、ざっくりいうと重力のかかっている方向で、イラスト内のグレーの線です)

対象が重力を無視していない限り、重心線(重力のかかっている方向)と水平線は必ず直角で交わります。

つまり、水平線を斜めにするケースというのはそのシーン内のキャラクターが斜めに立って見える場合だけです。

逆に、キャラクターが真っすぐ立って見えるシーンでは水平線が斜めになることはほぼありません。
キャラクターに対して背景が斜めになって見える場合は、水平線の角度をミスって設定してしまっているかもしれません。

クリップスタジオで作画する場合の余談ですが、
水平線を斜めにしたくない(カメラを斜めにしたくない)場合は、作画に入る前に定規を選択して画面を右クリック→表示されるメニューから「アイレベルを水平にする」を実行して確実にアイレベルを水平にする癖をつけておくと良いです。
さらに「アイレベルを固定」にチェックを入れておけば、水平線の位置・角度を固定したまま消失点の位置を自由に動かすことができます。
気がつかないうちに誤操作で水平線が斜めになっていた…という事態はあるあるなので、こうした操作で予防しておくことは大切です。

次は一点透視図法のコツを説明していきます。

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