漫画向けの木をクリスタの無料ブラシを駆使して描く方法

冒頭の画像のようなモノクロの木を描いていこうと思います。
木の部分に使用したブラシはすべて無料のもので、各素材ページへのリンクも張ってありますので、気軽にダウンロードして使ってみてください。(ただし、木以外の部分は有料素材を使っている箇所もあります)
なお、タイトルでは「漫画向け」としましたが、白黒以外の色を選択すればカラーの下塗りにも応用できる手法となっています。

※掲載した無料ブラシは2022/11/26時点で無料だったものなので、今後有料ブラシに変わってしまう可能性がございます。なにとぞご了承ください。
※作例を制作するにあたって普段使っているブラシが有料だったものは、類似の無料ブラシで代用しています。有料ブラシも一緒に掲載しますので、有料でも良い方はそちらも使って違いを確かめてみてください。

ラフを描く

ラフの描き方は人によって千差万別だと思いますが、
私は最初は自由かつ適当に手を動かすようにしています。
頭の中で組み立てることばかり考えていると記憶のなかにあるものしか出てこない感じがするので、とにかくザクザクと手を動かします。

画面に奥行きを出したい場合、前景・中景・遠景のうち2〜3つのエリアに分けて要素を描くとそれっぽく見せることができます。
今回は手前の左右に木を置いて、中景には道と林を置きました。
もっと広大に見せたい場合は奥の木を削り、遠くに山を描いたりすると遠景になって良さそうですが、今回は木がメインなので前景と中景までにしておきます。

ある程度輪郭が定まってきたらラフのレイヤーカラーをONにして、下書きレイヤーも設定しておきます。

今回の講座とは直接関係ありませんが、ラフや下書きはなんでも下書きレイヤーにしておくようにすると、後の作業で選択範囲を取ったりするときに引っかからなくてスマートです。

ここで最初のレイヤーの不透明度を下げ、上に新規レイヤーを追加してさらにラフを詰めていきます。

ここでは中景に大きい木を置いて、その少し後ろに切り株と倒木も描くことにしました。
現時点で他の部分はノープランですが、ほぼ完成形が頭に出来上がったのでここでラフ兼下書きは完了です。

この記事を見ながら同じように描く練習をされる方は、最初の完成図を見ながら下書きをしてみてください。

自分一人で完結する作品の場合は、「自分で完成形が掴める」ところまでアタリを描けば充分です。
ただしクライアントに進捗を提出する場合や、アシスタントに作画を依頼する場合は第三者でも汲み取れるところまで解像度を上げたり、文字で追記する必要があります。

例えば今回のような下書きは描いた本人にしかわからない、相手には伝わらないレベルのものなので「他人に提出するには不適切」な解像度といえます。

幹を描く

ラフ兼下書きができたので、ここから完成に向けて作画をしていきます。
作画にあたっては、基本的には画面の中で【手前にある】かつ【目立つ】要素から描いていきます。
今回は幹が該当するように思えるので、そこから描いていきます。

ちなみにモノクロではなくカラーの場合は「全体の色味に大きい影響を与える要素」から描くことが多いです。
例えば空は絵全体の色味を決定する要素なので、「奥」かつ「目立たない」場合であっても最初に詰めることが多いです。
モノクロとカラーでは描き順の考え方が違ってきます。

では、CLIP STUDIO ASSETSにてクリエイターさんが無料で配布してくださっている「茎」ブラシをDLしましょう。


https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1743096

このブラシを選択したらブラシサイズの「筆圧」にチェックを入れ、入り抜きで線が細くなるように設定します。

色はメインカラーに黒、サブカラーにホワイトを選択します。

ここでメインカラーとサブカラーの両方に黒を選択すると、ベタ塗りの幹が描けます。このテクニックはあとでシルエットの木を描くときに使います。

幹の描き方は以下の画像の通り。

幹・枝の位置を考えながら手前と中景の大きい幹を描きます。
細かい部分は後で整えるので、ここでは幹・枝の形とバランスがだいたい取れていればOKです。

画面の手前に情報を盛る

画面の手前がまっさらな幹だけだと退屈な感じがしたので、左側の手前に雑草と、右側は幹からきのこを生やすことにしました。
自然物を描くときは荒い線がかけるペンを使うと後々小綺麗になりすぎずに馴染ませやすいです。
この段階では幹と同じように「形を取るだけ」にとどめました。
パッと出のアイディアはあとで辞めたくなることもあるので、いきなり真面目に描かずに先に他の部分を進めてから後で採用するかを決めます。

なお、ここの線には普段使っている有料のブラシを使いました。
こちらのAカブラだま弱・強の2種で、2022/11/26時点で120CPです。

https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1748833

ちなみに無料のペンで描きたい場合は、プリセットの「入り抜きペン」の筆圧設定を画像のようにすると上記の有料カブラペンに近くなります。

ただし最近のクリップスタジオでは「入り抜き」ブラシはプリインストールされていないようなので、持っていない方は以下のURLからダウンロードしてください。


https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1842019

茂みの形を作る

引き続き【手前にある】かつ【目立つ】要素を探して描いていきます。
今度は中景の茂みが画面の大部分を占めているように見えます。
でも茂みをすべて手描きするのは苦しいのでブラシに頼りましょう。
今回はこちらの無料ブラシ「K茂みもさもさ」を使わせていただきました。


https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1858263

ちなみに普段はこちらの有料ブラシ「白黒茂みN_N」を使っていますが、使い方はどちらも同じです。


https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1782269

タッチが微妙に違うのですが、「K茂み」は丸っこいシルエットを、
「白黒茂みN_N」はシャープな形を作りやすいです。
個人的には有料の「白黒茂みN_N」の方が使いやすいのですが、好みの範疇だと思います。
価格も100G/700CPとブラシ1つを目的にして買うには高いので、購入は余裕があったらで良いかもしれません。

そして肝心の使い方ですが、以下の画像のように手を動かして茂みのシルエットを作っていきます。

これで輪郭はできましたが、このままでは茂みの内部がごちゃごちゃしていて木っぽく見えません。
なので、ホワイト(透明色はNG)を使って上から余分な部分を塗りつぶします。

これを繰り返して茂みを作っていくのですが、このとき隣り合っている茂みは重ならないようにレイヤーを分けます。

こうすると後で陰影を足すときに茂みが合体せず個々の形を保つことができるので、後で変更を加えたくなったときや、茂みの中から差し込む光を描きたくなったときになにかと都合が良くなります。

続いて、今度は地面を描いていきます。
地面の描き方はメインではないので割愛してしまいますが、今回は有料ブラシのみで描いてあります。

主に以下の「足元の岩場2」を使っています。

https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1776527

他にもころころした石や粒はこちらの素材集の「mb小石」「mb砂利」を使っています。
この素材集は他にも花や草、服系のブラシにもいいものがあって使っているのでおすすめ。

【CLIP STUDIO PAINT ブラシ素材集 モノクロイラスト/マンガ編】
https://amzn.asia/d/73jPJ6W

地面もいつか講座にできればと思って無料の地面ブラシもざっくり探したんですが、丁度いいものがないかもしれない…。
なにはともあれ、これで茂みと地面の形が取れました。

茂みに陰影をつける

今度は茂みに陰影をつけていきます。
順番はトーン→ベタで、2つとも既にある茂みレイヤーにクリッピングマスクを適用します。

トーンレイヤーは明るさ70%のグレーで塗りつぶして合成モードを乗算に、ベタレイヤーは空のままにしてすべての茂みレイヤーの上へコピペしておきましょう。
これですべての茂みにトーンが乗った状態になりました。

トーンレイヤーはこの色(V70%)でベタ塗り

今度はベタをつけていきますが、ここで無料の「自然界ブラシセット:参」に入っている「雑木ブラシ9」を使っていきます。
これは普段から使っているそのままのブラシで、程よく抜け感のあるたいへん使い勝手の良いタッチが出せます。



https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1769682

現時点で茂みはトーンが乗って以下のようになっていると思いますが、
今度はベタレイヤーを選択し、雑木ブラシ9を使って影になる場所に黒を置いていきます。

各茂みにベタを入れるとこうなります。

中景の幹を描く

今度は中景の幹を描いていきます。
描き方は最初の手前の幹と全く一緒で、ここでは形を取るだけです。
枝・幹が重なる部分は前後でレイヤーを2つに分け、切り株と倒木もざっくりと描きました。

幹の樹皮を整える

ここで幹の樹皮を整えていきます。
今のままでは茂みと同じように線がごちゃごちゃしているので、余計な線を塗りつぶしていきます。

今回はクリスタの「ペン」ツールにプリインストールされている「リアルGペン」ブラシを使いました。
見つからない人は上部メニューから「ウィンドウ」→「素材」→「素材[すべての素材]」を選択して、出てきた画面の検索ボックスで「リアルGペン」と入力すれば出るはずです。

なお、ここでも普段はきのこや雑草の形をとった時と同じ「Aカブラだま(有料)」を使っています。
無料素材で描いている人は同じく先に紹介した「入り抜きペン」の筆圧を変えたものでもOK。
なんならざらざらした感じの線が描ければ何でも良いです。

ただ、リアルGペンは実務で非常によく使うペンなので、普段から使って慣れていきましょう。

そして幹の描き方は以下の通り。
茂みの時と同じくホワイト(透明色NG)で、幹を描いたレイヤーに直接ホワイトで塗りつぶしていきます。

ちなみに幹の形が気になる場合は透明色で外側を削ったり、再度「茎」ブラシで整えても良いのですが、細かい調整は全体を描き終えた後にしますので、ここでの修正はあくまでほんのりにとどめます。

林に奥行きを出す

今度は林に奥行きを出します。
幹や茂みを描いたレイヤーよりも後ろに新しいグレーレイヤーを作ります。
次に幹を描いた時と同じ「茎」ブラシを選択したら、メインカラーとサブカラーの両方に同じ濃さのグレーを選択します。

そして幹と同じ要領でシルエットの幹を描いていきます。
枝分かれの感じがいい雰囲気になるように…

次は「雑木ブラシ9」を選択し、同じ色で奥の茂みを幹の上下に描き足します。
レイヤーはシルエット幹と同じままで大丈夫。

さらにその下にグレーのレイヤーを作り、シルエットよりも薄いグレーで林の中を塗りつぶします。
投げ縄ツールで選択範囲をとって、Alt+Deleteキーで一気に塗りつぶし。

今度は「シルエット幹」と「林の中」のレイヤーを2枚とも「透明ピクセルをロック」します。

プリセットのエアブラシツールから「柔らか」を選択し、上からホワイトをふんわりと塗ってグラデーションをつけます。

「柔らか」ブラシがない場合は、さきほどの「入り抜き」ブラシと同じセットに入っているのでこちらからダウンロードしてください。


https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1842019

コツは画面の奥に行くほど空気遠近法で白っぽく薄くなるように塗ること。
ここまでの作業でこんな感じになっているはずです。

空と雲を描く

それでは画面奥の空を描いていきます。
林の中を描いたときと同じように、空の範囲にグラデーションを作ります。

ちなみにグラデーションのつけかたとしては、漫画の場合は薄くする箇所に透明色は使わず、「透明ピクセルをロック」して白でグラデーションを付けることを習慣づけているとなにかと便利です。
例えば、あとで空部分から選択範囲を作りたくなったときに、白で塗る方法を採用していれば「Ctrl+空レイヤーをクリック」で選択範囲を取ることができます。
逆に透明色で削っていると、色のついた部分しか選択できないため選択範囲を取る用途では使えません。
やり方が複数ある作業をする場合は、「あとで便利になる」とか「修正がやりやすい」方法を選ぶようにする癖がついていると良いと思います。

それでは雲を描いていきましょう。
まずは以下の無料ブラシ「雲モノクロブラシ」で基本の形を描いていきます。


https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1691121

ブラシを選択したらレイヤーの表現色を「モノクロ」にして白と透明色で雲を描きます。
やんわりとパースを意識して空が広がって見えるように描いていきます。
ここではだいたいのパースと硬い輪郭を作るのが目的なので、おおよそで大丈夫です。

これだけだとエッジが硬いので、柔らかい輪郭も足していきます。
もう一つ無料のブラシ「雲ブラシpartⅡ」をDLしてください。


https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1470324

先程表現色をモノクロにしたレイヤーを、今度はグレーにします。
セットの中からお好みの雲ブラシを使って、白と透明色を使って自然に見える雲を描いていきます。

雲ができると画面の中の粗い部分が目についたので、
ここで木の幹や切り株、倒木を整えました。

やり方はひたすら「リアルGペンブラシ」を使い、白と黒で整えるだけです。
実物の写真を見ながら質感を添えていきます。
上の画像と見比べてみてください。

雑草ときのこを描く

さて、最初に形だけとっていた雑草ときのこですが、最終的に描いた方が画面映えしそうだと思ったのでそれぞれ加筆していきます。

といっても特にテクニックなどはなく、こちらも「リアルGペン」ブラシでゴリゴリと描いていくだけです。
こうやって自力で自然物を描くときは、なるべくググって実物の画像を見ながら描く方が上手くいきます。
形は既にとってあるため、見よう見まねでも写真と同じ構図にはなりません。
どんどん実物を参照しましょう。

描きはじめの人ほど「本物を見ないで描く方がかっこいい」と誤解しがちですが、
実際のところプロは「見なくても描けるくらい同じものを何度も描いている」というのが正しいです。特訓あるのみ。

草ときのこの線画ができたら下にレイヤーを作り、中を白で塗りつぶして「下地レイヤー」とします。

その下地レイヤーの上に今度はトーンレイヤーを作り、クリッピングマスクをしたらお好みの色で草ときのこに色をつけていきます。

地面を整える

今度は地面を整えます。
地面を作るときはブラシを使いましたが、整えるときは手描きをメインにして描いていきます。

中景の茂みにハイライトを付ける

画面のすべての要素がほぼ完成したため、ここからは「光の効果」を表現していく過程になります。
光を足すと画面がより生き生きとして見えます。
雰囲気が明るいシーンでは光の効果を盛るとイメージに沿った絵にしやすいです。

逆に「昼だけど雰囲気が暗いシーン」の場合は空や茂み、林の中などのグラデーションを濃くすると雰囲気に合わせやすくなります。
ここの作業では、茂みレイヤーの上に新しいレイヤーを作り、「雑木ブラシ9」を選択して白でホワイトを乗せていきます。(クリッピングマスクは設定しないままでOK)
そうして光を乗せるとこんな感じになりました。

目立つ幹に茂みを足す

ここに来て、真ん中付近にそびえ立っている幹に葉が見えないのが不自然に見えてきたので、追加で茂みを足します。
中景の木と差をつけてメリハリを出すために、少し描き方を変えます。

「雑木ブラシ9」を選択して、黒で大雑把に茂みのシルエットを描きます。

その上にトーン用のグレーレイヤーを足して、濃いめのグレーで「光のあたっている面」を描画します。

さらにその上にホワイト用のレイヤーを足して、中景のハイライトと同様に光の効果を乗せます。

幹をさらに整える

一部の幹と根の形が気になったので、修正を加えます。
ここでは目立つ幹の先端を自由変形で細らせたり、右の幹と根の形を手描きで変更しました。

これで完成です!
すごく複雑な手順に見えますが、慣れると決め打ちで手軽に広葉樹や茂みが描けるようになります。様々なタッチに合わせやすいので是非試してみてください。

【おまけ】光の効果でクオリティをアップして見せる

木の描き方はおしまいですが、さらに光の効果を乗せていくとよりクオリティがアップして見えるのでざっくりと紹介します。

まず、グレーのレイヤーに硬いペンで極太の白い直線を書きます。
そして先ほどの「エアブラシ」で透明色を使って片方の端を柔らかく削ると、硬いエッジとボケた部分の両方を持った白い線ができます。
それを複数作って重ねていくと、画像のような白い光の筋を表現できます。

さらにエアブラシでふんわりした光を足したり、光の塵のような効果を足すとこのようになります。

こうした派手な光の効果を足すと、手軽に画面内の情報量を増やせるので絵の粗が目立ちにくくなります。

絵はシンプルなほど粗が目立ってしまいがちなので、手軽に複雑さを足す方法を知っていると短時間でクオリティをアップできて便利です。
もちろん、シンプルのままで上手く見せる技術も大切なのですが…
これには簡単に使えるテクニックなどはなく、精進あるのみです…!!

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